令和4年度通常総会の開催にあたって



全技連マイスター会会長 大関 東支夫

 令和4年度の幕が開けました。
 この2年余を振り返ると、正に新型コロナに振り回された日々でした。昨年末に一旦は「落ちついた」と思った新型コロナですが、今度は感染率の高い新たな変異株「オミクロン株」が出現したことで、出口の見えない状況になっています。
 本来、ウイルスは「生き残ろうとする性質」があるので終息することはありません。今後も感染率の高いウイルスに変異し、ワクチン接種をしても潜り抜けて感染していきます。一方で、感染者の増加やワクチン接種で集団免疫もできてきますので重症化率は低くなり、段階的に収束の方向に向かうものと考えます。
 よく、「コロナ禍だから何もできない」という人がいます。
 しかしコロナに怯え、活動を停止していたら、「体も心も生活も」病んでいきます。この2年間で平均寿命も縮まっているように思います。正しい科学的知識を持ち、コロナと「共生、共存」していかなければならない時期にきています。
 コロナ禍でも日本のものづくりのたくましさを感じることがあります。
 現在、上場企業の3分の1が史上最高の利益を上げています。多くが車、電気、機械、医薬品、化学といった製造分野です。おかげで国や東京都の税収も想定以上に伸びています。
 昨年夏には、東京オリンピックも、一年遅れましたが無事に開催できました。コロナ感染拡大の中での開催でしたが、世界からは「日本だからできた」と評価する声があがりました。日本の対応力の高さです。
 私たち技能士会も、「やれることはやる」という考えで活動してきました。
 一つは、技能継承のために必要な事業は実施してきました。技能五輪、グランプリ、匠の技祭典、技能検定等です。
 二つ目は、国への要望活動です。政府自民党に対し、ものづくり庁又は技能士庁の創設、コロナ禍における技能士支援、後継者支援策等を要請してきました。
 また、国や政治家の理解と支援が必要との考えから、技能士会に理解のある、衆議院議員堀内のり子さん(元労働政務官、環境庁副大臣、現ワクチン担当大臣)に全技連特別顧問として就任いただきました。今後は堀内特別顧問と連携して国会での理解者、支援者を増やす努力を粘り強く進めていきます。
 三つ目は、コロナ収束後に技能士が戸惑うことのないように準備していくことです。コロナ収束後の社会は大きく変わることが予想されます。可能な限りの検討、準備が必要です。
 今の状況は、1918年の第一次世界大戦中に起きたスペイン風邪感染当時と似ていると言われます。その前の、1331年に中国で発生し、欧州に感染拡大したペスト(黒死病)の時期とも酷似しています。当時、中国も欧州も内乱や戦争の最中でした。不思議なくらいに大型感染と戦争が重なります。
 今回は、ロシアがウクライナに侵攻しました。1945年に第二次世界大戦が終了し80年近く続いた戦後が終わりました。「歴史は繰り返す」です。
 いま侵攻したロシアに対して、世界中が経済制裁を科していますが、武力侵攻に対しては国連もNATOも機能しないことが分かりました。世界の警察といわれたアメリカも絶対的な力がなくなっているのです。「自国のことは自分たちで守らないとダメ」な時代になりました。
 ものづくりは時代環境により左右されます。コロナ禍の時は医療、医薬品、オンライン関連が繁忙を極めています。戦争になれば、軍需製品、車両、燃料、衣料、保存食品等が重用されます。環境問題が重視されれば、省エネ、電気自動車、空気洗浄等が主役になります。いずれの時代でも、ものづくりは生活するうえでの基本です。
 第二次世界大戦で日本、ドイツ、イタリアは敗戦国となりました。しかし、いち早く立ち直り、世界の経済大国に進出したのは日本とドイツでした。その要因は、ものづくりがあったからです。その土台を担ってきたのが匠の技の人たちでした。技能士が健在でいる限り、世界がどのような時代になっても、また日本は逞しく立ち上がります。これからが日本の本当の底力です。
 さて、今年度の全技連マイスター会総会は、令和4年度・5年度の役員を決める重要な総会であります。総会及びその後の理事会で提案通り承認されますと、新任役員7名(副会長1・専務理事1・理事5)・重任役員48名(会長1・副会長副会長7・理事38・監事2)となります。
 令和4年度・5年度は、会員の皆様のご理解・ご協力を得て、この新たな陣容で全技連マイスター会の業務執行に努めてまいります。
 多難な時代となりましたが、私たち技能士会の役割はさらに大きくなるものと思います。皆さん力を合わせて新しい時代に備えましょう。