第31回技能グランプリ開会式あいさつ


会長 大関 東支夫  

 第31回技能グランプリ開会式を開催するに当たり、主催者を代表して一言ご挨拶を申し上げます。
 私たちは今、新型コロナウイルス感染症との闘いの只中にいます。
 本来なら技能日本一を決めるこのグランプリも、競技を直接間近にみていただきたいところでしたが、今回は無観客での開催となってしまいました。
 選手の皆様の熱い闘いは、新たな技術によるオンラインにより応援する多くの方々にお届けしてまいります。
 ところで今回の新型コロナは、今から100年前に猛威を振るったスペイン風邪に酷似していると言われます。
 スペイン風邪は、3月に第一波、8月に第二波、翌年1月に第三波と続きます。世界人口の3分の1にあたる約5億人が感染し欧州だけでも2,000万人以上が死亡しました。
 日本にも第三波まで襲い、当時の日本の人口約5,500万人の43%にあたる2,380万人が感染し39万人以上が死亡しています。
 日本にマスク着用が定着したのもこの時期だと言われています。
 多くの人が感染し集団免疫を得ることになり感染も収束にむかいます。
 スペイン風邪は収束しますが、その後が大変でした。
 疲弊した欧州諸国に変わり一人勝ちの経済大国になるのが米国です。
 米国企業の株価が暴騰します。国民は銀行から借金しても株を買いました。
 しかし10年後に大暴落を迎えます。銀行も破綻します。
 大失業時代が始まります。
 それを解決したのが第二次世界大戦でした。軍需による雇用拡大です。
 歴史は繰り返すといいます。
 今回の新型コロナ終息後の経済はV字回復にはならず、上昇回復に乗れる人と、さらなる困窮にあえぐ人に分かれるK字回復なっていくと思います。
 資金力による国家間の格差、国民の貧富の差は拡大します。
 物騒な時代が始まります。

 この混迷の時代からいち早く立ち直る国はどこか?
 いつの時代をみても、「ものづくり」に優れた国から回復します。
 第二次大戦のとき、敗戦国であった日本とドイツがいち早く立ち直りました。優れた技能、技術を基本にした「ものづくり」があったからです。
 今回はどうか?
 ものづくり現場のある中国、日本、ドイツの3か国が早期に立ち直る候補かもしれません。

 さらに日本を優位にさせるには、価格競争ではなく品質競争、品質列島の国にしていくことだと思います。
 日本を「匠の技が活躍できる国」「品質競争に勝ち抜く国」にする。
 本物の技能士が主役にならなければなりません。
 その意味でも本グランプリは時宜を得た大会だと思います。
 技能グランプリは技能五輪と異なり、年齢にかかわりなく「技能日本一」を目指して開催される大会です。
 人材育成及び技能向上の重要性が認識され、技能を持った方々が一層誇りを持って働ける環境となることが期待できます。
 本グランプリに参加する皆様は、日頃から技能の研鑚に励まれ、この栄えある大会に出場してこられました。平素の実力を十二分に発揮され、各都道府県を代表する技能士としての誇りをもって、正々堂々、技を競っていただきたいと思います。

 終わりに、本グランプリの開催にあたり、主催、後援、協賛をいただいた厚生労働省、関係諸団体、企業の皆様に深く感謝申し上げます。
 またグランプリの運営にご尽力をいただく運営委員、競技委員及び地元愛知県の関係者の皆様方に改めて厚く御礼申し上げ、開会のご挨拶とさせていただきます。
 ありがとうございました。