令和5年度通常総会の開催にあたって



全技連マイスター会会長 大関 東支夫

1. 3年ぶりの通常開催です。
 新型コロナに振り回された3年間でした。
 久しぶりに皆様の元気なお顔を拝見できて大変嬉しく思います。
 すでに国民の40%以上が新型コロナに感染したそうです。私も1ヶ月ほど前に家族中で感染してしまいました。症状は軽かったのですが今でも後遺症なのか風にあたるとくしゃみが止まりません。
 コロナ禍でも日本企業は頑張ってきました。特にものづくり産業が目立ちます。円安効果もあり史上最高の利益をあげている企業が続出です。自動車、電機、機械といった製造業の勢いがすごいです。税収も好調です。世界の株価が低迷する中で日本の株価だけは上昇を続けています。
 この元気な株価も年末には下がると言うのが私の予測です。海外は物価を下げるために金利を上げていますが、まもなく不況が深刻になります。慌てて金利を下げます。すると「円相場は上がり、株は下がる」のです。

2. 混迷を深める世界情勢
(1)歴史は繰り返している(大型感染と戦争が重なる)
 いま世界は混迷を深めています。
 過去に起きた、「大型感染の流行と戦争」が重なる歴史が繰り返されているのです。
 第一次世界大戦は1918年に起きましたが、1年後にスペイン風邪が流行しました。戦争と感染による死者が数億人を超えました。ドイツが敗戦しますが、2度とドイツが戦争を起こさせないように過酷な制裁を課します。国内総生産の20年分にもなる制裁です。
 とても払える額ではないため抵抗できるリーダーが待望されます。ヒトラーの誕生です。同時にムソリーニ、スターリンという独裁者がでます。そして第二次世界大戦に突入していきます。
   今回の新型コロナは2020年に発生しました。翌年、ロシアがウクライナに侵攻します。世界中で物価高が起きています。石油、小麦、大豆等の高騰です。
 今年末には食糧危機がきます。小麦生産国のロシア、ウクライナの作付面積が激減しています。併せて両国は化学肥料の輸出国ですが生産が追いついていません。両国の食料、肥料に頼るアフリカ諸国は深刻です。世界人口の40%近くをアフリカ諸国が占めています。日本は商社がしっかりしていますので他国ほど深刻にはならないと思います。
 欧米諸国は物価高騰を抑えるために金利を引き上げています。物価高騰の原因はコロナと戦争で流通経路が途絶えたことです。石油や小麦の流通経路を確保することを優先すべきですが、古典的な経済理論で、「物価を下げるには金利を上げる」という政策をとっています。私には的外れにしか思えません。
 これから世界不況、失業の津波がやってきます。不況が身近に感じた時の政策転換では遅いのです。
戦争もロシア、ウクライナ両国とも二度の冬を越したくないというのが本音です。停戦に入る可能性が高いです。これから数ヶ月は停戦協定を有利にするため激しい戦いが続きます。
 そして停戦には入りますが、ロシアは世界から敗戦扱いの処遇を受けます。ウクライナへの賠償責任を求められ、過酷な経済制裁が課せられ、プーチン逮捕・裁判要求もあります。孤立するロシアは核使用を現実化させていきます。第三次世界大戦の危機となるのです。
 これからの戦争に備えて世界陣営が「欧米日」対「露中北朝鮮イラン」と二分化・二極化していきます。グローバルサウスといわれる振興・途上国のインド、インドネシア、ベトナム、アフリカ諸国等の囲い込みが始まっています。

(2)機能しなくなった国連、NATO、大国
 世界の危機を解決する機関や国が機能しなくなりました。
 本来、平和を維持する責任を持つ国連安保常任理事国であるロシアが他国を侵略し核で脅しています。制裁や国連軍派遣には中国が拒否権を行使します。世界の大国としての品位もなくなりました。国連とは何かが問われる時代です。
 NATOも低迷しています。ドイツ以外は特別な産業も見当たらず、今後の成長も期待薄です。とても一枚岩で活動できません。
 大国アメリカも絶対的な力がなくなり自信を喪失しています。かつては世界の警察と言われ世界の紛争に関与して治めてきました。いまは自国優先、「他国にかまうな」というのがアメリカの主流です。トランプ前大統領主張の「アメリカファスト」が国民の本音なのです。
 このアメリカの隙間を狙う形で膨張しているのが中国です。軍事力と金力で南シナ海、アジア諸国、アフリカ諸国に進出しています。
 30年前、G7の国内総生産は世界の70%を占めていました。今は40%です。逆にグローバルサウス(振興途上国)が20%から40%、中国が単独で20%弱になっています。従来の先進国は金がないのです。
 同盟諸国の崩壊も始まりました。これまでの歴史的つきあいや政治理念よりも「現在の利益」が優先される国家関係に変わりました。
 他国・隣国が当てにできません。「自国のことは自分たちで守らないとダメ」な時代になりました。
 日本の軍事予算も5年間で2倍にします。すると世界第3位の軍事大国になります。今後は「信頼できる国との軍事同盟の強化・再構築」が始まります。

3. 日本の生き残る道
(1)日本の国際的重要性の高まり
 先日、広島でG7が開催されました。日本での評価はマチマチですが、世界からは「主要国をとりまとめ、ウクライナ大統領を招き、インド・ベトナム等の囲い込み」に努力した日本の力を高く評価する声が聞こえます。
 機能しなくなっている国連安保理事国に日本、ドイツ、インドが加わる道もでてくるかもしれません。新しい日本の国際的役割です。
(2)生き残りの基本は「平和と幸せを作る」ものづくり
 第二次大戦の敗戦国だった日本とドイツがいち早く立ち直ったのは、「ものづくり」があったからです。これからの混迷する時代も同じです。その土台を担うのが皆様方「匠の技の人たち」です。全国372万人の技能士が健在でいる限り日本は逞しく立ち上がれます。これからが日本の本当の底力なのです。
(3)技能士会としてやるべきことはやる。
 今年も私たち技能士会は「やるべきこと、やれること」はやっていきます。
 技能継承のための事業である、技能五輪、技能グランプリ、匠の技祭典、技能検定等があります。
 国、政党、自治体への要望活動もこれまでにも増して必要になってきます。特に皆様方に関連の深い地方自治体への共同要望が大切だと考えています。皆様と一緒にやっていきましょう。

   今日の総会も功労者表彰や多くの議題が予定されています。有意義な会となりますよう祈念して開会の挨拶とします。