令和5年会長年頭所感

「三重苦」の中で迎えた新年

  全技連マイスター会
    会 長  大 関 東支夫

(新年は有難い)
 どんなに苦しい状況にあっても新年を迎えると、「明けましておめでとう」と言います。「嫌なことは水に流して忘れる」。日本の素晴らしい慣習です。
 昨年はコロナ禍、ロシアのウクライナ侵攻、異常な物価高に見舞われました。今年は、この「三重苦」を継続する形で新年を迎えました。 <>br  3年以上続く「コロナ禍」ですが、ウイルスは生き残ろうとする性質がありこれからも新たな変異株になって出現してきます。日本では2,600万人以上が感染しました。自覚症状のない感染者も多数います。4回以上のワクチン接種者は5,000万人を超えました。集団免疫もできてきました。まもなくインフルエンザ同様の扱いになります。
 問題はゼロコロナ政策をとる中国です。繰り返すロックダウンに国民の反発デモも起きています。グローバル世界の今日、ゼロコロナ対策には限界があります。対応を誤ると不満が蓄積して天安門事件の再発になりかねません。徐々にウイズコロナ政策に移行せざるを得ません。14億の人口を抱える中国が集団免疫を確保できるまでは世界での収束宣言はできません。
 「ウクライナの戦争」も心配です。厳冬期に入る前に停戦を期待しましたがその気配はないようです。両国とも武器弾薬を他国に依存しなければ戦争継続はできない状況にあります。徴兵も財政も限界です。両国民をどこまで苦しめれば停戦する気になるのか。憎しみと不信の重なった両国間だけでは停戦できません。仲裁が必要です。いま、仲裁に入れるのは米国だけかもしれません。
 「物価高」はコロナと戦争に起因しています。原油、小麦等の原材料の流通経路が途絶えたことです。コロナと戦争が収束すれば改善されます。
  (これからの世界は)
 「三重苦」は改善されていきますが、あらたな難題も見えています。
 一つは、大不況の到来です。
 いま多くの国で物価高騰を抑えるために金利を上げています。本来、金利は景気の過熱した時に上げるもの。コロナ禍で経済が停滞している中で金利を上げていけば企業倒産、失業者増加につながります。的外れの金融政策に思います。
 二つ目は世界の政治的リーダーが交替していきます。
 今の時代は第一次世界大戦当時と似ているといわれます。戦争とスペイン風が重なりました。収束のあとに起きたのは、大失業、食糧不足、環境破壊でした。世の中は不満と不安に充ち溢れます。強いリーダーが求められました。現れたのがヒトラー、ムッソリーニ、スターリンという独裁者でした。第二次大戦の始まりです。
 今回も同じようなことが起きそうです。米国、ロシア、中国、日本も例外ではありません。各国とも足元から揺らいできています。ただ願うことは地球を破滅させるようなリーダーが誕生しないことです。
 三つ目は、世界の国々の陣営、国民が二分化されていくことです。
 ロシアの軍事侵攻により世界は軍事面も経済活動も(欧米日)対(露、中国、北朝鮮、イラン)の両陣営に分かれてきました。中間にあるインド、アフリカ、東南アジア、イスラム諸国は両陣営からの強烈な囲い込みにあいます。
 各国の軍事費も拡大しています。日本の軍事予算はGDP1%枠から2%に増額します。世界第3位の軍事大国になります。軍事費の拡大は国家間の格差、国民の格差を拡大していきます。半導体等は兵器にも使用されるため厳格な市場分けが起きます。原油や食料も同じです。どちらの陣営に入るかで国民も影響を受けます。食糧危機、環境破壊、医療格差は生命に係わる問題になります。
  (重要な日本の役割)
 混迷する世界の中で日本の存在意義はますます重要になります。機能しなくなった国連改革のため日本が常任理事国に推薦されるかもしれません。日本の軍事予算拡大を憂慮する人もいますが世界情勢が変わったのです。ケネディ元米大統領が言うように、「戦争の準備をすることによってのみ平和を維持することができる」のです。ただ、日本は恐れられる国になるのではなく世界平和のために「尊敬される国」にならなければなりません。
 日本だけが金融緩和を続けていることで円安が起きています。賛否ありますが、私には「神風」が吹いていると感じています。確かに原油、小麦等輸入品は高騰しましたが、製造業等輸出企業は史上最高の利益を上げています。産業の基本は「ものづくり」です。日本には衣食住工の手技を中心とした匠の技を持つ技能士がいます。ものづくりが国を救います。
 円安効果で海外からの観光客も増加してきました。高品質の衣食住工の製品にも関心が広まります。輝いていた昭和時代の再来も可能です。これからが本当の底力を発揮するときです。
  (全技連マイスター会は不滅です)
 今年は「兎年」。豊作の年と言われます。株価は跳ねて元気になる年です。良い伝承は信じましょう。
 皆さん、明るい夢を持って元気な一年にしていきましょう。