令和元年度全技連マイスター会総会 会長挨拶

 令和元年の幕が開きました。
 新たな元号が始まるこの皐月五月の今日。私たち全技連マイスター会の通常総会が開催されますことは大変喜ばしく清々しい思いで迎えることが出来ます。
 この通常総会では今年度の活動方針・予算案を決める総会になります。例年にも増して、意義深い総会であると感じています。同時に技能士会がこれからの令和時代をたくましく乗り切る礎となるような活発な議論が展開されますこと深く希望しています。

 ご案内のように、ここ数か月、各メディアで、平成の30年間を振り返る番組・記事が溢れています。長引く円高で地方のものづくりの現場が海外に流出。益々深刻化する生産年齢人口の減少・人出不足、少子高齢化問題。阪神淡路大震災・東日本大震災を始めとする自然災害。中国の1/3に縮んだ我が国GDP。世界の時価総額ランキング上位20社中14社を占めていた我が国企業が、昨年度は辛うじて30位にトヨタがランクされるという寂しい状況。中国・韓国・台湾勢に3周回遅れの惨敗を喫している電気・電子産業・IT産業。過去20年間で実質賃金は9%減少(世界主要国で実質賃金減少は我が国だけ)。
 正に、平成の時代は失われた30年と言ってもよいかもしれません。国力衰退の時代・ネガティブの時代との印象も受けます。

   一方でGTPは6年連連続伸長し昨年度は549兆円となりました。国の経常収支のうち海外からの配当・特許権使用料・ロイヤリティー等の第1次所得収支も、15年連続で貿易収支を上回り、昨年度20兆円を超えるまでになりました。
 また、訪日外国人旅行者は平成22年度861万人に比べ、昨年度は3.6倍の3,119万人に達しました。その影響は全国に及び、一局集中からの脱皮・地場産業の活性化・伝統工芸の復権に寄与していることが統計数字からも伺えます。

   これは日本の持つ隠れたたくましさでもあります。時代・産業構造が大きく変化する中で、第4次産業革命と称され、新たなものに挑む勇気・知恵・対応力を持って、昭和から引き継いだ文化・伝統・技術を、守るべきものは守り、変化に対応すべきものは柔軟に対応させつつシッカリと次の世代に継承する。それが、平成という時代の別の一面であったと言えるのではないでしょうか。

 私たち全技連マイスター会も新たな時代の第一歩を踏み出しました。多分に漏れず、私たちの仲間も、高齢化・後継者不足・社会生活の変化等に伴う需要の減少等の困難な環境に置かれています。しかし、「ものづくり」は、人間が社会生活を営む上で必須のものです。ときどきの状況の変化に適切に対応しつつ、後世に伝承すべき人類の英知の結集です。
 人生100年時代。元気な高齢者にはまだまだ蓄えた技と必須な英知を後世に伝える高い使命が与えられております。同様に全技連マイスター会の全ての会員にも求められます。
 新たな令和の時代の幕開けとは言っても、厳しい環境が好転する保証はありません。
 時代は常にその時代に生きる人たちの知恵と努力によって変わります。
 私たちの持てる技術・技能力で継承者を育成し、技術・技能力保持者が職業人・経営体として成り立ち得る状況の構築に一層力を注ごうではありませんか。 
   有意義な総会になることを心より祈念します。



令和元年全技連マイスター会東京支部挨拶
      全技連マイスター会会長 大関東支夫

 皆様、ご多忙の中、ご参加いただき大変ご苦労様です。

 令和になって初めてのマイスター東京支部の総会が元気に開催され嬉しく思います。
 昭和から平成に変わった時は、天皇の逝去ということもあり何か暗いスタートだったように思います。日本経済もこの時を頂点にしてバブルが崩壊。一気に下降を続けました。景気は長期間低迷します。平成は正に失われた30年だったと言えます。
 今回は上皇陛下が元気なうちに譲位されたこともあり、日本中が祝賀ムードのような明るい印象を受けます。日本経済もこの明るさ同様、元気になって欲しいと願います。

 ものづくりの世界を考えて見ましょう。「元号が変わってもものづくりは同じだよ」と言う方もおられるかもしれませんが、過去の歴史をみますと、その時代を特徴づけるようなことが起きているように思います。
 戦後の絶対的なモノ不足の時代には、作るモノは何でも売れます。靴なども右と左が違うものでもサイズがあえば買う人もいます。
 少し落ち着いた時代になると、高くても欲しいものがあると、カネをためてから買うようになります。ボーナスをもらったらテレビを買おう、洗濯機を買おうというように。
 そして物が国民に行き渡るようになると、今度は品質の良いものに買い換えようとします。車や電化製品、衣類、住宅等の交換です。
 さらに国民生活にもゆとりがでてくると美味しいモノを食べる、海外旅行等レジャーにカネを使うようになりました。日本が世界一と言われた昭和の終わり頃です。

 平成になるとバブルが崩壊します。世界でもこれまで経験したことのない体験でした。経済は長らく低迷します。この間に国民の所得格差が広まり、消費行動も二極化します。
 お金のある人は高品質の商品や食事に向かいますが、低所得層の比率が増えたことで、モノは安い方が売れるようになります。価格競争が始まりです。これが平成の時代でした。

 では、令和の時代はどうなるか。私は相変わらず所得格差は同じように続くと思います。ただ富裕層と低所得層の比率がどうなっていくかが今後の課題です。
 低価格製品を求めざるを得ない人たちは相変わらず「安くて少しでも良いモノ」を選んでいきます。逆に、所得に余裕のある人たちは本物志向になっていくと思います。「高品質で本物」と判断すれば高くても購入します。
 こうした時代の中で、技能士はどうすべきか。
 基本的には3つの視点から考えられると思います。
 一つは、現在の技術、技能をさらに高めて時代に引き継ぐこと。
 二つ目は、常に新たな時代環境を意識した改善、改革ができるかということです。
 日本には100年企業が世界中で最も多く存在するといいます。同一企業が100年以上も長く存在できるというのは、それなりの要因があるはずです。
 典型的な企業はトヨタ自動車です。もともとは機織機を作る会社でしたが、時代の潮流を捉え、自動車会社を設立しました。しかし、ある日突然機織り会社から自動車会社になったわけではありません。長年、培われてきた技術、技能のノウハウがあったから自動車会社に変身できたのです。それが見事に時代にあったのです。

 技能士の世界でも同じです。昔は良かったと同じ事の繰り返しで昔の夢を追っていても時代に取り残されます。これは過去に良い思い、栄光の経験をした職種ほど変化ができないようです。
 北原白秋の童謡に「待ちぼうけ」という歌があります。
「待ちぼうけ 待ちぼうけ ある日せっせと野良稼ぎ そこへ兎が跳んできて ころり転げた 木の根っこ」という歌です。
 昔、宗の国のある農民が野良にでて働いていると、目の前に兎が跳んできて、偶然そこにあった切り株に頭をぶつけて死んでしまった。農民は労せずして兎を手に入れた。これは良い事を知ったと、その日以降スキを放り出して、連日切り株の前でじっと兎がぶつかるのを待っていた。いつまで待っても兎はこない。結局、彼は国中の笑いものになった。
 このエピソードを北原白秋は歌にしたのです。過去の良い出来事を期待して、融通を利かせず、変化に対応していかなかなければこの農民と同じようになってしまう。
 これからはITを活用したり、他業種とのコラボ作品を考案したりして消費者の求めるものを商品化していかなければ市場で勝負にならないと思うのです。

 第三は、営業面で工夫・進化しなければなりません。
 技能士は腕は達者だが商売は苦手と言われます。
 皆様の作品をより高く評価してもらい収入面での向上を確保していかなくてはなりません。技能士の世界でも蔵が立つような人をたくさん誕生させなければならないのです。

 私たち技能士会は、こうした考えの中で令和の時代にふさわしい活動をしていきたいと思います。皆様、新たな夢と希望を持って進んで行きましょう。