令和3年会長年頭所感

    全技連マイスター会 
       会長 大関 東支夫

 令和3年(2021年)の年が明けました。
 昨年を振り返ってみますと、歴史に残る重要な出来事が多く生じました。しかし、国際的にも国内的にも、新型コロナウィルス感染症(COVID19)に翻弄され、ほかの一切が忘れ去られた感があります。
 令和2年度の全技連マイスター会総会までがコロナの影響で、会発足以来初めての書面総会となってしまったことは残念でたまりません。
 私は会長挨拶の中で「過去の世界史を振り返ると、世界経済は30年で転換している。大きな戦争・紛争は40年毎に勃発している。2020年は30年毎の経済変革・40年毎の世界紛争が重なり合う年だ。世界を震撼させるような深刻な事態が起きないか、大変心配している」と申しました。不幸にして的中してしまいました。
 新型コロナ感染者数は、まもなく世界で1億人(死者数は211万人)に達しようとしています。わが国でも既に第3波まで見舞われており、人・物の流れが大きく制限されている中で、人々は不安と、やりきれない息苦しさの中で生活をしております。
 この1年を超えるコロナ禍は、国力・国民生活を圧迫しGDPも3%強のマイナスと発表されました。私たちの仲間うちでも、経済状態・経営環境が日に日に圧迫される業態も見られます。
 私は技能士の厳しい状況を踏まえ、昨年11月に政府自民党に3点の要望をしました。
@技能士の誕生(認定)から育成、活用、支援まで一貫して総合的に取り組んでくれる「ものづくり庁」「技能士庁」「匠の技庁」等の創設
A新型コロナで継続困難となっている技能士の積極的な支援
B後継者育成、被災地支援、社会的地位向上等が円滑に行う技能士会活動の支援
です。
 菅政権誕生直後でしたが参加した議員からは熱心な質疑が続きこれまでにない手応えを感じてきました。
 だが、こうした活動はすぐに効果が表れるものではありません。残念ながら、経営状況の悪化によりマイスター会を退会するという大変悔しい、悲しい事例も生じております。

 一方、こうした中でも、創意・工夫により、成果を上げている活動があります。
 全技連マイスター会も昨年度まで出展をしておりました「ものづくり匠の技の祭典」は、コロナ渦で開催が危ぶまれましたが、東京都は2億円の経費でオンラインによる「集合型イベント」として実施することができました。これまでできなかった全国の匠の技もリアルに紹介することができました。現在もラインにより閲覧することができます。
 現代技術を活かしWEB機能を駆使した開催は展示県の数も増え、参加者・見学者が全国に広がる成果をあげることができました。今後の大きな力になります。苦しくてもその状況に対応した創意工夫を行うことにより、新たな展望が開けるのです。

 コロナ問題に隠れ、ともすれば見逃しそうになりますが、我が国の少子・高齢化は歯止めがかかりません。1971年(第2次ベビーブーム)の出生者数は210万人でした。それが50年後の2020年には86万人、今年度は80万人を下回ると想定されております。少子化の歯止めがかからない中で、「人生100年時代」という高齢化は進むばかりです。
 私は、4年前の全技連マイスター会総会の挨拶で「若い人口のボーナスによって、経済成長の恩恵を受ける時代はとうに過ぎ去った。大きく状況が変化している中では、過去の経験・識見だけに頼っては衰退を待つだけだ。」と申しました。後継者育成、技能継承は深刻な課題です。
 ここ数年、マイスター会退会者数・会費未納者数が増加傾向にあることは、定時総会で発表しておりますが、今年度はその傾向が一層大きくなっております。
 我が国の少子高齢化の傾向はこれから長期間継続します。ものづくりの世界でも、長期的な少子化、高齢化に対応する仕組み・製品・技能を提供できるように不断に創意工夫を続ける必要があります。

 全技連マイスター会は、この1年間、各支部も含め、一般市民・会員相互間の交流が殆んどできませんでした。しかし技能は休むことなくしっかり継承しなければなりません。マイスター会活動は会員相互間や一般市民と交流することで活性化していきます。
 単に過去の経験をなぞるだけではなく、時代状況・人々の要求に対応した創意工夫による活動実践を続けることこそ、全技連マイスター会の活性化を高めることになるものと信じます。

 今年の干支は辛丑(かのとうし)です。モノの本によれば、「辛いことが多いだけ、水面下では大きな希望が芽生える年」だそうです。まさに、昨今の状況を示しているではありませんか。現在、我々全技連マイスター会の会員は、この難局に歯を食いしばって立ち向かい、創意工夫により乗り越える。そうすれば、希望という芽が地面に顔を出すはずです。

 来年の年頭のあいさつでは、声を高らかに、「会員の皆さん、おめでとうございます!全技連マイスター会の発展万歳!」といえることを祈念し、私の年頭の所感といたします。